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2023 年に向けたレギュレーション・テックの動向-総コスト、成長の前提条件、より高い賭けに焦点

2023 年に向けたレギュレーション・テックの動向-総コスト、成長の前提条件、より高い賭けに焦点

当初はFinextraにて発行

作成者:Eventusのマイク・カスティリオーネ(Mike Castiglione)、規制業務ディレクター(Director of Regulatory Affairs)、デジタル資産(Digital Assets)

 

2022年は私たちの多くが既に知っていたことを証明する年でした。コンプライアンスの問題はあなたの会社を落ち込ませることもでき、また激変する不確実な市場において生き残らせることもできます。規制関連技術、すなわちregtechは、企業が効率的な方法で複雑な規則に従うという難題に対処する方法です。またこれはリスクマネジメントでも重要です。チームが新たな年の準備をする際、regtechが2023年によりよいものとなるための6つの動向は以下のとおりです。

  1. サービス・運用費用
  2. ビジネスと成長の必須要件としてのRegtech
  3. リスクを冒しても制定するということは大きな賭け
  4. 資産クラス全体に教訓を生かす
  5. データの透明性と専門性
  6. 商品、場所、管轄区域を越える(Cross-Product, Cross-Venue, Cross-Jurisdiction)

サービス・運用費用

最高の技術を有する会社は成功する傾向にあります。このため、技術は本質的に価値があるのです。現在、企業はインフレや需要の縮小、賃金の高騰に直面しており、これらの圧力には技術への投資で対処しています。ですから、2023年はおそらくこの事業サイクルで初めて、企業予算が厳しいという現実を踏まえた戦略的計画が必要となります。トムソン・ロイター(Thomson Reuters)はコンプライアンスチームに関し、次のように述べます。これらのチームへの需要が増加しても、「どの事項を優先させるかの判断は、予算が限られることと有能な専門家が不足する可能性により厳しくなります。」

regtechはこのような環境において、メーカー希望小売価格に展開と運営の費用を加えた金額、すなわち保有コストの総額が予測と一致する場合に優位となります。顧客は、コンプライアンス関連ソフトウェアが日々の業務処理を行い、自社の従業員が高価値のタスクに集中できることを期待します。また、自社の人材がプレッシャーを感じている場合に信頼できるコンプライアンスの専門家を有するregtech企業を重要視します。

コンプライアンス予算が厳しい状況を踏まえ、2023年において注目すべきは、ユーザーがカスタマイズ・設定を行い、独自のニーズに自ら対応できるプラットフォームのようなregtechソフトウェアでしょう。この「バイ・トゥ・ビルド」(カスタマイズ)オプションにより、一からプログラムを作る先行投資を行ったり、柔軟性の低いベンダーをスワップアウトするための費用を費やさずに済みます。

厳しい現実としては、企業がregtechを適切に選択し採用した場合のみ、損益計算書上の助けとなるということです。実装が非常に難しいコンプライアンス関連ソフトウェアを選択すると、その後費用が発生する場合があります。拡張できない、またはパラメーターの調整に柔軟性のないregtechは、徐々に別のものに置き換える必要があるため、これも追加費用が発生します。しかし、優れたユーザーエクスペリエンスとカスタマーサポートを提供するregtechを選択した場合、コンプライアンスの専門家を保持すること、そして費用の掛かる人材探しや補償の不足を避けることの方が簡単であることに気づくでしょう。

ビジネスと成長の必須条件としてのRegTech

規制機関は多くの場合、会社が既定の市場に参入することを許可されるまで、特定のコンプライアンス能力を求めます。これは、「ビジネスの必須条件としてのregtech」であり、会社が市場参入する前の必要条件です。そして2023年は市場とコンプライアンスの失敗が多発したため、私たちは規制機関だけでなく、投資家も資金調達ラウンド期間にコンプライアンスシステムが準備されていることを期待すると考えています。これは、「成長の必須条件としてのregtech」です。 コンプライアンス関連ソフトウェアが会社の事業計画において必要となるタイミングは、どんどん早まってきています。多くの会社がビジネスモデルとキャッシュ・ランウェイによって「生き残るための必須条件のregtech」と考えることもあるでしょう。

投資家は規制に関する問題とより深く、より懐疑的なデューデリジェンスに関する詳細な質問をすることがよくあります。ベンチャーキャピタル企業であるSequoia社は、ポートフォリオ会社が誤った方向に導いた結果、大幅な損失を被ったため、11月に投資家に対しデューデリジェンスを強化することを約束しました。2022年初めに比べ、VCは可能性のある投資について吟味する際により多くの時間をかけています。商品と市場の適合性を見出すには、スタートアップ企業のコンプライアンス能力が市場の規制要件に適合するか評価することも必要です。

この動向は、まさにデジタル資産会社に当てはまることですが、制裁やマネーロンダリング、インサイダー取引または市場操作に遭遇する可能性のある金融サービス事業を展開する企業にとっても重要なことです。垂直的または地理的市場に参入することは、事業の他の部分がどの規制リスクを負うのか、またそのリスクを扱うことのできる技術は何かを判断する優れた洞察力を必要とします。しかし、Jai Ramaswamyのチーフ・リーガル・オフィサー(chief legal officer)であるアンドレセン・ホロウィッツ(Andreesen Horowitz)によると、良い結果とは最初から商品にコンプライアンスを組み込むことが全体的に安価ですばやくできるか、それとも後でリバースエンジニアを行う必要があるのか、ということです。

リスクを冒しても制定するということは大きな賭け

不安定な市場や注目すべき詐欺行為や不正行為のケースに対し、政府は対応に追われています。政府が対応する際に、多くの場合、まず頼る武器は規則の制定です。

規制機関は、世界中で制定を行うためのさらなるリソースと地域を模索しています。2022年にはクリプトのプロモーターに対するインサイダー取引と違反金が多発しました。米国の証券取引委員会(SEC)の2022~2026年の戦略的計画は、同機関の最優先目標として規則の制定を挙げ、新たに人員の倍増を行ったクリプト資産に関する制定チームは2023年、その結果を見ることとなります。SECは企業に対する違反金を科すだけでなく、より多くのチーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)に、個人的にその企業のコンプライアンスの実施状況を証明してもらい、潜在的な刑事責任をそれらの人々に負わせます。

2022年、金融安定理事会(FSB)(すべてのG20メンバーを含む機関)は、規制機関がクリプトによるシステムリスクから保護する権限を世界中で必要としていると強調しました。香港およびシンガポールは、クリプトの許諾と促進に関し、厳格な態度を示しています。影響力のある世界的な規制機関により単なる調査が行われた場合であっても、会社の評判が低下したり、法律費用の負担がかかる場合があります。信頼を築くには時間がかかりますが、失うのは一瞬です。

このような環境において、regtech、特にコンプライアンスの専門家がサポートする透明性の高いソフトウェアには利点があります。規制機関は、リスクをよく理解していること、存在を把握しているソリューションを積極的に使用していること、また資料作成を求めます。たとえば、英国の主要な金融規制機関である金融行動監視機構(FCA)は、企業が技術的変更にどう対処するか研究を行いました。FCAは次のように結論付けました。「従来の技術に大きく依存している場合、変更が失敗したり、緊急で変更を行わなければならなくなり」、また「従来のインフラやアプリケーションの割合が低い企業は、変更に成功する確率が高いのです。」

資産クラス全体に教訓を生かす

2022年からの明白な教訓として、「クリプト」と「TradFi(従来型金融)」はまったく関係のないのものではなく、マルチアセットアプローチからリスクマネジメントまでの一部です。11月、G20のリーダーたちはクリプトが他の金融文書と同様に「同じ活動、同じリスクには同じ規制を適用する」の原則に従うべきだと繰り返しました。企業が従来の金融からの教訓を適用することのできる人材を雇用し、機関レベルのコンプライアンス関連技術を提供する場合、クリプトのリスクの測定および管理を行うことができます。企業がクリプトを拙速に統合したり、テストせずにデジタル資産のベンチャーを立ち上げた場合、市場は当然、厳しく過酷な状況となります。

2022年には定評のある多くの機関がさまざまな思いを持って、クリプトまたはブロックチェーンのイニシアティブを発表しました。これらの会社は慎重にデューデリジェンスを実行しており、クリプトは時間をかけて慎重に採用することが、安定を求める市場参加者としての美徳であることを示しました。一方、クリプト業界にとって2023年は「基本に立ち戻る」傾向にありました。すなわち、裏付けによる信頼と検証、デフォルトで透明性を持つこと、倍額の費用を費やすことや倍額の貸し付けを行うことを避けることなどです。

2023年に「TradiFiとしてのクリプトやクリプトを採用したTradiFi」という動きをかじ取りできた企業は、規制機関のニーズを含むあらゆる資産クラスにおいて専門性を持つ企業です。コンプライアンスのスペシャリストは、regtech
が分析を各部門に落とし込むのではなく、マルチアセットクラスに対応する能力を発揮することを求めています。市場操作を監視する、およびリスクを特定する取引監視はデジタル資産のコンプライアンスにおける成長分野です。

データの透明性と専門性

規制機関、投資家および市場は2023年に向けてより高い透明性を求めています。このニーズをサポートすることは、長期にわたるビジネス動向です。会社データの専門性により差別化を図ることができます。専門性はデータの取り込みから分析(規則ベースおよび機械学習)までを網羅し、可視化も扱うため、コンプライアンスの専門家は定量的な動向を深く理解することができます。

2023年、Regtechは透明性を追加することで、他のシステムも含む切れ目のない文書作成、監査可能性、統合のペースを維持しなければなりません。ここでは、ブラックボックス予測分析はそれほど有用ではなく、「説明可能性」が優位となります。たとえば、イングランド銀行と金融行動監視機構(FCA)による金融サービスにおける人工知能(AI)についての2022年の報告書では、規制機関の精密な調査に関連して、モデルについて説明できることは「極めて重要である」と述べています。

商品、場所、管轄区域を越える

2022年、コンプライアンス関連技術における「異種商品間」のニーズは、業界の専門家の間で注目を集めるようになり、当社はこの動向が2023年も継続すると予測しています。規制機関は、他の場所で他の商品に影響を与える意図をもって金融商品に対して取引注文を行うなどの相場操縦に強く注意を払っています。

このトピックはプライベートな話し合いや技術業界のカンファレンスで話題となるものです。

Acuitiが実施した調査によると、これがコンプライアンス、技術およびトレード担当者がサードパーティのトレード監視ベンダーを求めているという理由です。カナダの規制機関は今年、「市場間の監視義務」を満たすよう、互いにより多くのデータを共有することを発表しました。 シンガポール金融管理庁は10月、クリプトに関して、国境間のマーケット統合リスクに対応するために、よりグローバルな規制基準および業界の行動規範を推奨しました。

データの専門性により、世界中のさまざまな管轄区域の異なる場所において、あらゆる商品に関する異常性を監視することができるようになります。

2023年に向けたRegtechの動向は既に動き始めています

金融の歴史を通して、変動や市場の圧力、注目された事業の失敗により、政府は多くの規則やコンプライアンス規則を制定することになり、これが複雑化を招き、規制要件を増やすことになりました。適切な規制関連技術を選択するなど、コンプライアンスシステムにリソースを増やすことで準備が整います。2023年に市場がどの方向に動いても、企業が自分たちのregtechが外部の精査から守ってくれるのか、リスク管理をよりよく行えるようにサポートしてくれるのか、再評価を行う準備は既にできています。

Eventusについて

Eventusはマルチアセットクラスの取引監視、アルゴ監視、リスク管理ソリューションの世界的な大手企業です。強力な受賞経験のあるValidusは株式、オプション、先物、外国為替(FX)、債券、デジタル資産市場で採用しやすく、カスタマイズや運用も簡単なプラットフォームです。

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